古き良きアメリカを時代背景にメンズのオーセンティックウェアを展開する〈BEAMS PLUS〉がアメリカで初となる期間限定ストアをオープンした。ロサンゼルスの広くて青い空の下、突如現れたお店に一歩足を踏み入れると日本から届いた新作商品が所狭しと並び、東京の旗艦店と見間違うほどの完成度。ロサンゼルスはもちろんニューヨークや日本から多くの人が駆けつけオープニングも大いに盛り上がった。世界観を凝縮したリミテッドストアの詳細からロサンゼルスでの開催に至った経緯、今後の展望までディレクターHarryこと溝端秀基氏にインタビュー。
〈BEAMS PLUS〉について教えてください。
〈BEAMS PLUS〉は1999年にスタートし今年で25周年を迎えました。1940年代半ばから60年代半ばのアメリカはかつてない戦後の好景気のもと、政治や経済、スポーツや文化など、あらゆる面で大きく成長し、それに伴う合理主義によって大量生産がシステム化され、シーンやスタイルに応じてアイビースタイル、ワーク、スポーツ、ミリタリーのユニフォームが新たに編集されました。〈BEAMS PLUS〉はファッションの礎でありスダンダードであり続けている、これら4つのカテゴリーの機能的で無駄のない衣服を正しく解釈するとともに、普遍的な美しさと時代性を反映したディテールに敬意を払いながら、シルエットや素材、機能性を現代的にアップデートさせ、次世代に受け継がれるカジュアルウェアを提案しています。僕自身は2016 年からディレクターを務めて現在で8年目となりました。年齢層はあえて設けていませんが日本国内では30代から70代までと幅広く、メンズファッションウェアと掲げてはいますが女性ファンが多いのも特徴です。そして海外での認知度もかなり高くなり卸売りにも力を入れていますが、今後さらなるグローバル展開に力を入れるべくオリジナルファブリックと国内縫製を追求しています。
〈BEAMS PLUS〉ならではのこだわりを教えてください。
日本国内だけでも100店舗以上ある〈BEAMS〉の中で原宿店と丸の内店が〈BEAMS PLUS〉の旗艦店になります。ブランドが持つ世界観を知ってもらうにはお店の空間も含めてトータルで味わって欲しいのですが、商品一点一点からも日本ならではの匠的な要素を体感して頂けると自信を持っています。実は先日、2週間かけて日本国内をまわってオリジナルファブリックを製作する旅をしてきました。2026年春夏の仕込みになるのですが、日本国内で作るオリジナルファブリックは海外でかなり反響が大きいですし、そのこだわりが着心地だったり素材の落とし込み方にも表現できているので多くの人に体感してもらえたら嬉しいです。すでにベーシックなものは持っている、という人に響くブランドだと思っています。
〈BEAMS PLUS〉は数年前から海外で展示会をしていると聞いています。外国人からの反応はいかがですか?
アメリカを軸にしたものづくりで知られる〈BEAMS〉の中でも〈BEAMS PLUS〉は古き良きアメリカを体現しなければいけないという思いがあります。現在日本以外だと欧米を中心に世界各国の百貨店や小売店など83社で取り扱われるようになりました。ヨーロッパで展示会をしたり海外のバイヤーたちの声を耳にすると僕たちがとことんこだわった見た目や形、つまりデザインが受け入れられているという手応えを感じますね。一見すごくベーシックなんですが職人的な技というか絶妙な素材使いだったりディテールへのこだわりをジャパニーズ・アメリカーナと表現されることもあって、それはつまり日本人ならではの技術を随所に感じてもらえているのだなと確信しています。もちろんアメリカから強く影響を受け憧れを持ってブランドを進めていますが、一方で日本の生地のクオリティの凄さにも自信があるので、僕たちならではの洋服作りを受け入れてもらえるのは素直に嬉しいですしやり甲斐を感じています。
〈BEAMS PLUS LIMITED STORE〉について教えてください。
日本国内にある〈BEAMS〉の店舗またはワンフロアを丸ごと〈BEAMS PLUS〉に変えてポップアップイベントをするという企画を2022年に始めました。最初に実施した店舗は神戸店だったのですが、地下1階のフロアを徹夜作業で空っぽにして〈BEAMS PLUS〉の商品だけを詰め込みました。2日間限定でお店をジャックした形なんですがそれがとても好評で、そのお店を〈リミテッドストア〉と名付けてその後は渋谷、今年の5月には台北でも開催しました。世界でもトップクラスに入る店作りをしている原宿店と丸の内店のスタッフにも協力してもらい、場所が変わっても同じ世界観を演出できるよう徹底しています。いわゆる通常の〈BEAMS〉を丸ごと変えたのですが単なるポップアップで終わらせないようブランドのことを熟知しているスタッフが店頭に立ち、お客さまにはスタッフとのコミュニケーションを楽しみながら買い物をしてもらえるように心がけています。ひとりでも多くの方にブランドを知ってもらえる場所として今後も展開していきたいです。
今回〈BEAMS PLUS LIMITED STORE〉はなぜロサンゼルスを選んだのですか?
実は去年ワールドツアーをイメージしたポスターを勝手に作って会社に提出したんです。その時点でほぼ台北は決まっていましたがロサンゼルスは候補に出ていませんでした。商品をただ並べるだけのポップアップではなく〈BEAMS PLUS〉の面白さを伝えられるイベントをしたいと思っていたところ、25周年という記念すべき年ということもありワールドツアーの話が本格的になりました。そして僕たちが憧れてやまないアメリカでお店をできたら素晴らしいなという思いから、今回ロサンゼルスでやりたいと手を挙げました。ワールドツアーの意図としては多くの人と繋がっていきたいという思いがあるので、このロサンゼルスの期間中にもローカルのアーティストやその地に根付いているライフスタイルなどを知れたら今後にも繋がると思っていますし、地域の盛り上がりにも貢献したいです。今回のLIMITED STOREはとても評判がよく、今後のビジョンもより明確になったと思っています。
〈BEAMS PLUS LIMITED STORE in LA〉で期待していることや楽しにしていることなどあれば教えてください。
憧れの地アメリカで〈BEAMS PLUS〉が持つブランドの世界観をお店全体で感じてもらうことができるのは僕たちにとっても貴重な体験です。実は期間中のタイミングにあわせて日本から数名のショップスタッフを連れてきています。ロサンゼルスでのこの企画が決まった時、たくさんのスタッフが立候補してくれたんです。彼らは普段からブランドの世界観を守ってくれているメンバーですし、みんなでお店を作りたいという気持ちを持ってくれているので一緒に来て体感してくれていると思います。今回ロサンゼルスという地でお客さまとコミュニケーションを取りながら素材の説明だったりフィッティングに立ち会えるのはうちのスタッフにとっても素晴らしい機会です。海外でリアルな反応を見たり感想を聞くことで今後の店づくりにも繋がっていくと思っています。
店内は〈BEAMS PLUS〉の世界観を体感できるこだわりのラインナップ。全身のスタイリングからバッグや靴下などの小物まで厳選されたアイテムが店内を埋め尽くす。
ロサンゼルスのファンにおすすめしたいウェアがあれば教えてください。
今回ロサンゼルス用に製作したものは特にないのですができる限り〈BEAMS PLUS〉の世界観を伝えられるような商品群にしています。アイテムに関しても定番のボタンダウンシャツやスウェット、ジーンズ、ミリタリーパンツが豊富です。そこで見てもらいたいのがやはりオリジナルにこだわったファブリックですね。レセプションの時もたくさんのお客さんが実際に商品に触れて反応がよかったので安心しました。ただやはりセグメントされた商品なのでもっと見せたい商品もありますし、日本の旗艦店にもぜひ来てもらいたいですね。
〈PALACE SKATEBOARDS〉や〈J.CREW〉に次ぐコラボレーションパートナーがあれば教えてください。
アメリカンデッキシューズでおなじみの〈Sperry Top-Sider〉が2025年に90周年を迎えるということで次の春夏コレクションのタイミングで(BEAMS PLUS TOP SIDER)というコレクションを発表します。今年の6月にパリのファッションウィーク、その後のニューヨークでもお披露目してはいるのですが大きなコレクションとしてローンチ予定です。数年前からグローバルコラボレーションとして日本はもちろん、海外の〈BEAMS PLUS〉でも別注という形でシューズの展開はしていますが、90周年という記念すべきタイミングでシューズブランドの枠を飛び越えライフスタイルブランドとして僕たち主導でウェアラインも展開することになりました。今回のポップアップ期間中、12月になりますが別注アイテム〈Mil CVO〉をLIMITED STOREでもリリースします。アメリカを代表する老舗ブランドのひとつなのでそちらも楽しみにしていてください。
『BEAMS PLUS』を選ぶ人に伝えたいことがあれば教えてください。
いまは時代的にも多種多様になっていますし、みんなのファッションの楽しみ方や個性の出し方もどんどん広がっていると感じています。〈BEAMS PLUS〉では数シーズン前からオフィシャルのルックの中で女性モデルも起用しています。その影響もあって想像していた以上に原宿店に女性のお客さまが増えました。また海外の卸先からも女性のファンが増えているという声を頂くのでぜひ女性のお客さまには気軽に足を運んでもらいたいですね。今回のオープニングでも女性の方が試着したり手に取ってくれていたのが嬉しかったです。
『BEAMS PLUS』の今後のビジョンについて教えてください。
ひとまずLIMITED STOREという形でアメリカに進出させるという夢が叶いました。今後は〈BEAMS PLUS〉の世界観を表現できるような空間をニューヨークやパリ、ロンドンなど他の都市でも作れたらなと思っています。お店作りからブランディング、MD構成も含めて日本の旗艦店はセレクトショップとしての側面も持ち合わせています。そこでしか買えないブランドや別注もそうですが、お店=箱の作り方をすごく大事に思っているのでぞれぞれの土地に合ったお店のコンセプトを考えて展開していきたいですね。そしてローカルアーティストとのコラボレーションやその都市の地場産業を支えることなども踏まえて僕たちなりの店作りで盛り上げていきたいです。これからも楽しみにしていてください。
Interview: Megumi Yamano
Photo: Alexa Vitug
Video: Media Cycle Production